とりのすの愉しみ方
とりのす本来の香りを楽しむならロックがおすすめですが、カクテルベースとしても相性が抜群です。さまざまな組み合わせで「とりのす」をお楽しみください。
戸塚酒造は2022年、国産原料を使った初のアクアヴィット「とりのす」を開発しました。アクアヴィットは15世紀には歴史に登場していた、じゃがいもと麦芽を原料とした北欧発の蒸留酒。ハーブ、スパイス、果皮などのボタニカルの風味をまとい、「命の水」を意味するラテン語由来の名前の通り、多くの人々の心と体を癒してきました。なぜ、佐久の地でアクアヴィットなのか。そこには、地元農家とのつながりと、酒蔵の経験値が重なり合って生まれたストーリーがあります。
「とりのす」は、軽井沢で飲食店などを経営する荻原代志智さんが、農業を営む荒井芳光さんと片山修さんに畑づくりについて相談したことがきっかけで生まれました。荒井さんが「畑からお酒ができないか?」と考え、どうせなら誰も手掛けたことがないものをと、荻原さんはノルウェーのカーリング選手から手渡されたアクアヴィットを思い出します。「アクアヴィットは海の民・ヴァイキングの国のお酒。山国・信州ならではの山賊のアクアヴィットをと考えました」。いつもは高原野菜を育てている荒井さんと片山さんは、初めてじゃがいも生産に乗り出します。1年目は7月の長雨でほとんど採れなかったものの、2年目は1.5t、品種をトヨシロに絞り込んだ3年目は2.3tと、収量は順調に上がっています。醸造で出る残渣を液肥にして畑へ戻す循環や、フェンネルを栽培する試みも実現。今後はトラクターのうしろに樽を積んで畑を耕す「トラクター熟成」も試します。じゃがいも畑として蘇らせた耕作放棄地の地名は「鳥ノ巣」。その名を冠し、鳥のように大きく羽ばたいてほしいと願いを込めました。
原料となるじゃがいもは、遠く離れた北海道から分けてもらった種芋で育てます。荻原さんが以前から親交のあった北海道常呂町の女子カーリングチーム「ロコ・ソラーレ」のコーチ・小野寺亮二さんは、じゃがいも農家。大手メーカーのポテトチップス原料を育てるなど、実績のある生産者です。その小野寺さんから種芋を分けてもらう関係は、1年目から続いています。遠征で信州に来た時は、畑を見てアドバイスをくれたり、ロコ・ソラーレのメンバーもじゃがいもの植え付けを手伝ってくれたりと、約1400km離れた常呂町と軽井沢の繋がりが「とりのす」の生産を支えています。
「とりのす」の醸造は弊社杜氏・西村和彦が担当しました。西村は日本酒と焼酎を手掛け、2020年からジンの醸造も経験していました。とはいえ、アクアヴィットは見たことも飲んだこともないお酒。「アクアヴィットとは何だろう?」というところからはじめ、一番苦労したのはハーブの種類と比率、そして香りのつけ方でした。「核となるスパイスはアニス、フェンネル、キャラウェイです。ジンの経験からそれぞれ単体で蒸留する再現性の高い手法を採用し、十数種のブレンドを試しました」。しかし、味わいとインパクトに欠けることから、さらに別のボタニカルを検討します。ローズマリーとオレンジピールにたどり着き、その状態(フレッシュかドライか)や比率で模索を続けました。都合3年かけてようやく製品化に至った今、「今できる精一杯を注ぎ込みました」という言葉に、西村の探求心と粘り強さ、醸造家としての誠実さがにじみます。
「弊社社長が繋がりのあった荻原さん、荒井さん、片山さんから『自分たちがつくった原料からお酒を醸してほしい』と提案がありました」と語るのは、蔵人で農業担当でもある上野健。今は荻原さんたちと弊社の4者でじゃがいも畑を管理しています。1年目は100kgだけの貴重なじゃがいもで、原料を無駄にできないプレッシャーの中で試験醸造を繰り返しました。じゃがいもはアルコール発酵の養分となる糖をつくるでんぷん量が少なく、腐造菌もつきやすいという難しさがあります。さらに麦芽を慣れ親しんだ米麹に置き換え、酒蔵がアクアヴィットをつくる意味を深めました。「アクアヴィットは料理とのペアリングという点でも可能性を感じています。今回醸造したうちの半分は軽井沢ウイスキーの樽で熟成させ、数年後にリリースする予定です」。
とりのす本来の香りを楽しむならロックがおすすめですが、カクテルベースとしても相性が抜群です。さまざまな組み合わせで「とりのす」をお楽しみください。
ストレートに「とりのす」を楽しむならソーダ割。氷を入れたグラスに「とりのす」とソーダを1:3の割合で注いで、くし切りにしたレモンを添えます。冷凍庫で冷やした「とりのす」は少しとろみが出て、ハーブの香りがより引き立ちます。「とりのす」ならではの華のある香りが次の一口を誘い、飲み飽きません。
rødはノルウェー語で赤を意味します。氷を入れたグラスに「とりのす」30mlと無塩のトマトジュースを適量注いでステアし、ブラックペッパーを散らして。お好みでカットレモンを添えると味わいはよりシャープに。トマトジュースはぜひ軽井沢産で。さらにおいしくなるので、飲みすぎ注意です。トマトの濃厚な風味に負けない「とりのす」の香りに、ブラックペッパーのパンチが効いています。
氷を入れたグラスに「とりのす」30mlとグレープフルーツジュース45mlを注ぎ、ソーダ適量とステアします。ソーダ割よりさらに飲みやすく、グレープフルーツの香りと「とりのす」のボタニカルの香りが優しく溶け合います。
「とりのす」20mlにココア適量を混ぜるだけ。意外な組み合わせですがよく合い、特に甘いカクテルがお好きな方には喜ばれること請け合いです。ホットもアイスもいけますが、氷を入れたアイスが特におすすめ。スライスオレンジを添えると、より華やかで複雑な香りを楽しめます。